ばばぶろぐ

読書感想を綴ったり趣味の福袋を楽しんだりするブログ。 まとめサイト等への転載はお断りします。

読書記録

アレン・エスケンス「償いの雪が降る」感想

なんかちょっと素敵な感じのタイトルの本。昔書評で見かけたことがあったのを思い出し、今回読んでみた。 誰か身近な人の伝記を書こう!という大学の課題に対し、まともな大人が身近にいない主人公のジョーは、介護施設に赴いて手頃な(という単語は不適当だ…

逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」感想(第11回アガサ・クリスティー賞受賞、2022年本屋大賞受賞)

(ウクライナ侵攻の影響もあってか)昨年一番売れた本だそうで、50万部を突破しているという大ヒット作。 何度も行われる戦闘シーンの描写も、しっかり読めるし、 自分が言うのもおこがましいが実によく出来た作品なのだが、 何がびっくりってこれがデビュー…

相場英雄「アンダークラス」感想

前作に続けて読んで改めて思ったが、なんか人間の描き方が単純ではないか?被害者側は基本善良で、貧しい生まれながらたくましく這い上がろうとする人たち。 加害者側は悪辣で、他人を食い物にする下衆。 という単純極まりない構図。 良い人に見えたけどこ…

M・W・クレイヴン「ブラックサマーの殺人」感想

クレイヴンのポーシリーズ第二作。前回「ストーンサークルの殺人」(面白かった)を読んだ時は、二作目はどうなるのかなーと思っていたが、期待を上回る面白さだった。 クレイヴンさん舐めてましたすみません。 今回は、主役のワシントン・ポーが以前逮捕し…

相場英雄「ガラパゴス」感想

「覇王の轍」が面白かったので、前の作品を読んでみた。ただ、書かれた時期がこちらの方が古いからか、ちょっと微妙、と思うところがいくつかあったかも。 超聖人過ぎる被害者、 それまでに縁があったわけでもないのに、日本の産業界について非常に親切に(…

浅倉秋成「六人の嘘つきな大学生」感想

二部構成の作品。前半の「就職試験」部分はなんとも、フーン……という程度。 後半の「それから」がいわゆる謎解き部分だが、 ここで大きく一捻り入り、ラスト付近でさらに一捻り。これがよい。 また、就活というテーマ設定の妙よ。 多くの元学生たちの心に刻…

相場英雄「覇王の轍」感想

理想的な社会派ミステリってのはこういうやつ!と思わされた良作。まったくはじめて読む作者と思っていたが、この本は「震える牛」のスピンオフだったらしくて、実は二度目ましてだった。 震える牛は面白かった、という記憶はあるものの内容は一切覚えてい…

S・J・ベネット「エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人」感想

エリザベス女王が登場人物(※主人公)として登場する、という日本では俄かに信じがたい小説。(日本だと何となく不敬罪?的な感覚を覚えるような)エリザベス女王は英国民から深く敬愛されていたと思うけど、日本の天皇陛下へのそれとは種類が違うんだなぁ…

M・W・クレイヴン「ストーンサークルの殺人」感想

目新しい作品ではない。とは思うが。主人公のワシントン・ポーは信念のためなら(概ね)何でもするタイプ。過去の事件で情報の取り扱いに係るミスを犯したことで被害者による報復殺人を招き、それが原因で休職中。しかし、進行中の猟奇連続殺人の被害者の遺…

アンソニー・ホロヴィッツ「ヨルガオ殺人事件」感想

前作のカササギ殺人事件は「クリスティっぽさを感じる!」という感想だったけど 今回は「面白かった!」と思った。こっちの方が好き。 というかカササギ殺人事件、確かに読んだのに、 作中作の名探偵、アティカス・ピュントの名前は (響きが珍しいからか)…

アンソニー・ホロヴィッツ「殺しへのライン」感想

おもしろーい……!!これまでの二作はホーソーンへの不快感が極上ミステリを楽しむ邪魔をしていたが、 今回は特にホーソーンにイラっとするポイントがなかったので、ストレスなく読めた。 が、今回は事件単品としてもまあ面白いんだけど、 それ以上に「ホーソ…

ニコラス・ブレイク「殺しにいたるメモ」感想

本格「フーダニット」ミステリの傑作と聞いて。原著Minute for murderは1947年刊行だというが、今読んでも面白かった。名作の寿命は長い。 戦時中、ドイツで死んだと思われていた男が生還し、 毒入りのカプセルを記念品として持ち帰る。 その男の無事を祝う…

アンソニー・ホロヴィッツ「その裁きは死」感想

序盤からいくつもの謎や伏線をちりばめ、緻密に回収していく。なんというか、綺麗なミステリだ。今回も前作同様、過去にあった事件が関わってくる。でも総じて、前作ほどには印象に残らなかったかな。ホーソーンは相変わらず好きになれるポイントがないしよ…

東野圭吾「白鳥とコウモリ」感想

帯で白夜行とかが挙げられていたので、新たな代表作になるのかと期待して読んだが正直そこまでではなかった。が、何かきれいな感じ?には終わった(いつも思うが、そこはさすが東野圭吾)。悪い評判など一切ない弁護士(白石)が殺害され、ある男(倉木)が…

新川帆立「元彼の遺言状」感想

主人公の麗子は弁護士。ある日、超資産家の元カレ(縁は薄い)が、ものすごい額の遺産を、自分を殺した者に遺す、という遺言を残して死去してしまった!ついては多額の報酬をゲットするために依頼人を殺人者に仕立てるべし、というアイディアの目新しさが3…

ホリー・ジャクソン「自由研究には向かない殺人」感想

ティーンエイジャー向け青春ミステリ、と言えると思うけど、 まったくティーンエイジャーじゃない私でも非常に面白く読めた。 主人公の女子高生・ピップが、住んでいる町で起こった殺人(失踪)事件を自由研究のテーマに設定し、調べなおす。 彼女がまっすぐ…

東野圭吾「ブラックショーマンと名もなき町の殺人」感想

主人公の女性はワトソン役を務める。癖のない性格。探偵を務めるのは叔父。(鍵を開けたり刑事のスマホを抜き取って中を見たりと)おおよそ何でもできる器用すぎる手や、巧みすぎる話術等、普通だったらいやいやそんな上手くいかんやろ!と突っ込みたくなる…

アンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」感想

※ネタバレ要素があります。 先日読んだヨルガオ殺人事件が面白かったので、こちらのシリーズにも手を出すことにした。 ホロヴィッツ自身が語り手を務めるので、実際の名作ドラマである「刑事フォイル」などの話がちょこっと出てきたりするのがドラマファン的…

東野圭吾「希望の糸」感想

(※ネタバレ成分を含みます) 東野圭吾作品だと、やっぱり加賀恭一郎のシリーズが一番好みかなぁ。 ミステリではなく人間ドラマ?なのでそこの好みは別れそうだが、 久し振りに「面白かった!」と思った。 この読後のそこはかとない切なさを残すためには、 …

ピーター・スワンソン「アリスが語らないことは」感想

※ネタバレあります※ まずタイトル。このタイトル凄い好き(※不思議の国のアリスとは関係ないです)。邦訳のセンスがいいんだろうな。終始漂う不穏すぎる雰囲気の中、物語は静かに、でも明らかに破滅方向に向かっていく。 嵐の前の静けさ、みたいな気持ち悪さ…

エリー・グリフィス「見知らぬ人」感想

オカルト要素ありのミステリかと思われたが、意外とそうでもなく……この話のメインが何だったのかよくわからない。まさか美魔女の(少々?乱れた)教師生活を綴った日記ではあるまいな?面白くなりそうな雰囲気は何度か醸し出されたが、結局そこまで面白くな…

下村敦史「真実の檻」感想

※ネタバレ要素あります※冤罪をテーマにした連作短編形式。短編がそれぞれに面白かったし、全体通しても満足。あと柳本弁護士がいいキャラしてた!個人的好みで言えば、最後にもう一捻り入れてもらえたら尚ありがたかったな。(育ての親が注いでくれた愛情を…

朝井まかて「ボタニカ」感想

今度朝ドラのモデルになるという牧野富太郎の話。 植物学の権威、ということしか知らなかったが、家庭生活における(いや社会生活においてもだ)トンデモぶりが凄まじく、 絶対に近くにいて欲しくはないタイプ。 今いたら発言小町だか5chだかでボロクソに言…

中山 七里「鑑定人 氏家京太郎」感想

この作者さんの本を読むのは三冊目なんだけど、確信した。合わない。すごく苦手。 多分なんというか、考え方が合わないのだと思う。だがその割に犯人はすぐにわかる。なぜだ。主役の氏家がなんだか、ものすごく鼻について読むのがしんどい。鑑定サスペンスと…

東野圭吾「沈黙のパレード」感想(映画化原作)

(ネタバレ的な要素があるかもしれません。) 数か月前に読んで忘れていたんだけど、映画化するんですね。 序盤に、部屋の狭さを語るときにチラッと「オリエント急行」への言及があって、何で急に?と思ったんだけど、 どうやらこの本が東野さん版オリエント…

麻見和史「女神の骨格 警視庁殺人分析班(警視庁捜査一課十一係)」感想

んーこれまでの中では一番微妙だったかも。 首を挿げ替えられた白骨死体発見からの連続殺人っていう事件と比べて 真相っていうか動機のスケール小さっ……と思ってしまった。 何というか、白骨死体の頭入れ替えのインパクトありきで、 そこにそれっぽい肉付け…

佐藤究「テスカトリポカ」(直木賞、山本周五郎賞受賞作) 感想

※ネタバレ要素あります※ 大型クライムノベル!!なんだけど、一番印象に残ったのはパブロの愛の深さと悲しい潔さ。 コシモが「とうさん」(パドレ)と呼んでいたのはバルミロだけど、 パブロとコシモの不器用な父子っぽい感じが何か凄く響いたなぁ……。 (パ…

小川糸「ライオンのおやつ」感想

最期を迎えるならこんなホスピスがいいなぁ、というおとぎばなし。 終盤は亡くなった方がばんばん出てきたりするファンタジックなところも多めで、 題材の割にお涙頂戴という感じでもなく、さくっと読み終える。 ただ、期待した感じとは少し違ったというか、…

米澤穂信「黒牢城」感想(第166回直木賞、このミス2022年大賞受賞作)

好きな作家さんで、直木賞、山田風太郎賞、このミス……とあれこれ受賞してて、 面白くないわけなさそうな感じだったんだけど、正直あまりピンと来なかった……。 端的に言うと、歴史小説とミステリの組み合わせと言えよう。 ただ歴史小説成分が七から八割かなぁ…

中山七里「護られなかった者たちへ」感想

※ネガティブな感想です。ネタバレも要素あり。 何だろう、文章は読みやすかったけど、全然腑に落ちないというかなんというか……。 そもそも人でないことは序盤から明らかだし、どんでん返しというのは違うよね。 作者の思想に沿って、犯人を追っている筈の刑…