ばばぶろぐ

読書や映画の感想を記録のために書いています。ミステリが好き。

多崎礼「レーエンデ国物語 ②月と太陽」感想

レーエンデ国物語の2巻、「月と太陽

1巻からは時が経ち、シュライヴァとレーエンデの友情も忘れ去られてしまった頃。
帝国に支配され、抑圧された毎日に慣れてしまっていたレーエンデに自由をもたらすために革命の旗手となる少女・テッサと、生まれを隠して彼女と関係を深めた少年・ルチアーノとの物語だ。

読み終えて、この巻単体で見ると誰も幸せになってないんだな……と暗い気持ちになった。
これがシリーズもので、後に続く歴史の一部分だとわかってないと成り立たない。
単に帝国軍に敗れるんじゃなくて、レーエンデ側が一枚岩じゃない故に革命が失敗するという、勧善懲悪ストーリーじゃないところもやるせなさがあるし、
1巻と違って性犯罪も描かれるので読んでいて少し辛い面がある。
戦時下においては避けられない犯罪だと思うし、そこまでどぎつい描写がされたわけじゃないけど、やっぱり辛かったな。

一方、あらすじには「結婚の約束を残して」なんてロマンチックに書いてあったけど
ルチアーノとテッサの関係は自分には今一つ腑に落ちないまま終わった。
過程すっ飛ばして「そういうことになりました」って言われただけみたいな感じで、
何となく共感できずに終わった面は否めない。
というか、二人の間に恋愛必要だったか?という感じもしないでもない。

キャラクターとしては、ヘクトル・シュライヴァ推しの自分としては、
類似性のあるキャラとなるギヨム・シモン副隊長のことが勿論好きになったけど、
一番印象に残ったキャラはエドアルドだった。
終盤の彼の凄絶な美しさは、多分映像化すると一層映えるだろう。

ホリー・ジャクソン「卒業生には向かない真実」感想

※ネタバレ度、きわめて高いです。

 

本の宣伝文句で、「衝撃作!」なんて言われた場合、
9割は誇大広告だと思うけど、これは本当に衝撃だった……。
一作目を読んだとき、ピップがこんなことになるなんて誰が想像しただろう。

あの頃は確かに、少女の成長物語でもある「青春ミステリ」だったはずなのに、
こんな終着点が待っていようとは。
前作のラストで、精神状態が危ぶまれたピップだけれど、
今作では立ち直っている!……なんて都合の良い話はなく、
睡眠障害を患って売人から薬を買って常用しており、
最終的には不倶戴天の敵Aをぶち殺し、クソ野郎Bを殺人犯に仕立て上げることで両方を排除。

いやぁ……この一線を越えてる感じ、
多分一作目からノワール味を漂わせてくれてたらここまで驚かなかったんだけど、
だってそんな感じじゃなかったのに!?という衝撃が。

と言って別に批判的感想を抱いたわけではなくて、
実際どうなのかは知らないけど、
一作目の人気が出たからとってつけたように続編出しました……みたいな感じじゃなく
しっかり繋がっている感じはして、自分的には好感。
賛否ありそうではあるが。

あ、あとホーキンス警部補が何かしら助けてくれて和解がありそう(予定調和)
とか思いながら読んでいたが、そんなことはなかった(どうでもよい感想)

多崎礼「レーエンデ国物語①」感想

面白かった!

読む前に帯を見て、「いやいや……」と半笑いになってたけど、
こりゃあ空を仰いで「トリスタン……」とか言いたくなるわ。

でもでも、トリスタンも良かったけれど、
父上(英雄ヘクトル・シュライヴァ)が最高に格好良かった……!!
可愛くて格好良くて強くて、誰よりも娘を愛し、友を愛し友に愛される男。圧倒的陽のオーラ。
まさに「僕の考えた最強の父上」状態で、何故口絵に全身絵がないのか納得できぬ。
全身見たかった……。
一方でリリスはわざわざ絵が載るほどの存在感はなかった気がする。個人的には。

トリスタンの死は決定していたものの、
ヘクトルもどこかで(誰かのために)退場するのではとずっと気が気ではなかったが、
ひとまず本編は生きていてよかった。

というか、一番格好いいのはヘクトルで、
一番ドラマティックなのはトリスタンであって(※個人的意見)、
本編中一番大きかったイベントが処女受胎のユリアがそもそも
ほかの二人に比べると若干薄いかも……しれない。主人公なのに。
惚れた男とは結ばれず(ほぼ死別)別の男と結婚し、
最愛の父を喪った後はその遺志を引き継いで首長となり、
北方七州の独立を成し遂げたが二度とレーエンデに戻ることは出来なかった、
という彼女のその後が終章でほんの2ページにまとめられてしまっているのは、勿体ないなぁ……。
トリスタンと過ごした日々が彼女の人生のクライマックスだったとかそういう意味なのかもしれないが、はてそうかなぁ……。

そのほか、印象に残ったシーンとしては、プリムラにバレるシーン。
ヘクトルとトリスタン、ユリアの三人で過ごす古代樹エルウィンでの日々がとても幸せだっただけにその後の展開は辛かったんだけど、
特にこの、ほんの一瞬前まで「ユリア」「ユリア」って世話を焼いてくれていたプリムラが豹変して、
もう名前ではなく「そいつ」「この女」「化け物」になっちゃう場面が怖すぎた。

それから、ユリアとトリスタンが最後に別れ別れになるところ。
明らかな死別を前にして、あまり悲壮感というか特別な感じがなくて、
結局二人は、初めて会った頃の「ヘクトルを守る」という約束を守ったのだと、そんな風に思えて、よかったな。

 

ただ指摘が多い「話し言葉の軽さ」は同意するところで、
会話がちょいちょい大分軽いノリになるのに初めは少し驚いた。
まあまあ慣れたけど、読む方が想定している「理想の和製ファンタジー」とのギャップが大きいとショックなのかも。

映画「はたらく細胞」感想

漫画は試し読みしたんだけど、いまいちピンと来なくてそのままにしていた本作。
ロードオブザリング見たいとふと思い立ったものの
丁度良い時間に上映がなかったので、こっちを見てみた。

が、個人的な感想で言うと、それほどではなかった……かも。

芦田愛菜ちゃんの体内が細胞たちの活動の舞台だが、
その父親を演じるのが芸達者の阿部サダヲであるばかりに(?)
阿部サダヲ便意と戦うところが面白さのピークになってしまった印象で、
後半、ちょっと長いな……と時計を見てしまった。

■以下雑感
・アクションは凄かったと思う。さすが佐藤健。メイン武器がサバイバルナイフ(みたいなもの)だったのも格好良かった。
・しかしさすがの佐藤健も白塗りになるとちょっと面白い。
・異常細胞の子、雰囲気あるな~誰だろう?と思ったらFukaseってなっててびっくりした。
・ヘルパーT細胞(染谷将太)のビジュアルが一番好み。
・血小板ちゃん(マイカ・ピュ)可愛い。名前も可愛い。
松本若菜のマクロファージ先生も可愛かった。

……ストーリー的に特に語るところがなかったので見た目ばっかりに。

小林泰三「密室・殺人」感想

いや、何か……谷丸警部いい人過ぎんか???

 

本作の主人公は、
息子にかけられた殺人の疑いを晴らしてほしい、という
圧の強いマダムからの依頼を受けて事件に挑むことになる
四里川探偵事務所の助手、四ツ谷礼子である。
コテコテの(?)関西弁で話すが(正直少し読みづらかった)、
ステレオタイプのずけずけした図太いタイプかと思いきや
何やらトラウマを持っており、危なっかしい面を見せる元警官。
この危なっかしさが、おっちょこちょいとかそういうんでなく幻覚を見たり失神したりというガチの奴なので、
(普通に大丈夫かこの子?という意味でも、語り手の信頼性としても)
ほんのり不安になりながら読む。

四里川の方は、「探偵業を行うには面が割れていない方が都合がよい」
という強い信念を持っているので、依頼の調査はほぼ四ツ谷に行わせ、
己は安楽椅子探偵よろしく集まった情報に基づいて事件を組み立てるタイプ。
なるほどなるほどそういう関係性か、とまあそんな風に納得して読んでいたら、
最後に(殺人事件の真相よりも)衝撃の事実が。

解説にもあったけど、あの映画を思い出した。
けど、それを知って読み返すと、確かにそうなんだよね……
会話相手の微妙なスルーぶりとかが確かに書かれてるんだけど、
四里川の若干鬱陶しいキャラクターのせいで違和感なく読んじゃったなぁ。

……と、意外ではあったんだけど自分の全体的満足度は「ほどほど」といったところ。
ただ警部はあまりにもいい人過ぎんか、マジで。

短い読書記録いろいろ③

■呉勝浩「爆弾」

このミステリーがすごい!2023年版 国内編第1位!
ミステリが読みたい!2023年版 国内編第1位!
……ということで、評価に違わずおもしろかった!!
取調室での知恵比べ(このバトルが実に面白い!類家さん好き)が読ませる読ませる。
清宮さんも、スズキにはしてやられるけれど、いいキャラだと思う。
等々力がもうちょっと活躍するのが王道展開かと思うが、そうでもなかったのは意外。
次作も読むぞ。

 

アントニー・バークリー「レイトン・コートの謎」

シリーズ化されているってことはある程度人気があるんだと思われるが、
私はそこまででも……と思った。
探偵役のシェリンガムは超名探偵ではなくて、あれこれ間違いもするのだが何とか謎を解いていく……!
というと何だか面白そうなのに、残念。
多分、シェリンガムに魅力を感じなかったのが大きいんだろうと思う。
古い本なので訳文の好みとかもあるのかもしれない。
最近の海外ミステリって本当読みやすいもんね。

 

■D.M. ディヴァイン「悪魔はすぐそこに」

これまた随分むかしの作品だけど、こっちは(というと失礼だが)面白かった。
「クリスティも絶賛」とかあったので、それは期待できると思って読んでみたんだけど、当たりだった。
解説文に、再読すると面白いと書いてあったのでちょっと試したんだけど、
確かに……!二度美味しかった。

 

■下村敦史「同姓同名」

半分近く読んでもミステリっぽい展開にならないので、
うーん?と思いながら進めていたが、なんとか無事にそれらしい展開に。
最終的に「騙された!」ポイントも幾つかあって満足した。
このアイディアで小説書いたってのがそもそもすごい。
でもオタク君の方が結局死んじゃってるのはかわいそう……

 

■下村敦史「フェイクボーダー 難民調査官」

つまらなくはなかったのだけども。
書かれた当時と比べて移民関係のトラブルなんかも聞くようになった今なので、
何となく、主人公たちと自分の感情の間に乖離があって、微妙な気持ちになってしまった。
このシリーズに関してはもう読まないかな。

白井智之「名探偵のいけにえ」感想(2023年 本格ミステリ・ベスト10第1位)

面白かった!正月休みに一気読みして目がしょぼしょぼ。

 

教祖ジム・ジョーデン率いる宗教団体、「人民協会」の信者たちが
共同生活を送っている一般の社会とは隔絶されたジョーデンタウンで殺人が起きるが、
このジョーデンタウンでは、ジム・ジョーデンの奇跡の力によって怪我や病気はありえず、
病気が治り、欠損した四肢が生えてくる……と信者たちは信じており、
信じているゆえに病気や怪我を認識しないという特殊過ぎる設定。
このため、信者から見た世界と、信者でない者から見た世界での推理がそれぞれ披露され、
解決編が超ボリューム!になっていて楽しめた。

序盤の軽く挟まる日本のエピソードが伏線になっているのも良かったし、
重要かと思われた人物が中盤で脱落していくのも緊張感を増して好き。
乃木野があっさり退場したところで「ここやべーところだ!!!」と思い知らされるのが好み。

姉妹編の「名探偵のはらわた」の方も読まなくちゃ。

 

しかし、ミステリに出てくる子供って、どうして「何か不気味なもの」みたいに感じられるんだろう。不思議。

 

あ、あと作品のモデルである人民寺院事件のことを全く知らなかったけれど、
読後に検索してみたらかなりそのまま書いてることがわかって戦慄した。
宗教団体がガイアナにコミューンを作って集団生活してたのも、
下院議員が訪問して殺害されたのも、クールエイドに毒物を混ぜて手段自殺したのも事実とは。

しかも昔の話っていっても50年も経ってないんじゃまだ歴史上の出来事……ってほどでもないそこそこ最近(?)じゃないか。ほんと衝撃……