ばばぶろぐ

読書感想を綴ったり趣味の福袋を楽しんだりするブログ。 まとめサイト等への転載はお断りします。

M・W・クレイヴン「ブラックサマーの殺人」感想

 クレイヴンのポーシリーズ第二作。

前回「ストーンサークルの殺人」(面白かった)を読んだ時は、

二作目はどうなるのかなーと思っていたが、期待を上回る面白さだった。

クレイヴンさん舐めてましたすみません。

今回は、主役のワシントン・ポーが以前逮捕したサイコパスであり超人気シェフであるジャレド・キートンとのバトル(※まさにバトルって感じ)。

ポーが過去、実の娘を殺した(ただし死体はない)容疑で逮捕した男なのだが、

なんとその娘・エリザベスが生きて現れ、DNA鑑定をもって確かに本人と確認された。

ポーは無罪のセレブシェフを監獄にぶち込んでしまったのか……?というストーリー。

そりゃもう、作中の決まり文句である「ポー、大変なことになった」の極みである。

しかし本作では、ポーの「もしかして自分はとんでもない冤罪を引き起こしてしまったのか?」なんていう苦悩を描くわけではない。

ポーはジャレドの邪悪ぶりを確信しており、ブラッドショーは迷いなくポーを信じる。

前作で絆を深めた上司たちもポーの味方をしてくれる。ついでに旧知の仲である病理医(新登場)もいい味だ。

全然暗い雰囲気にならないので、ポーがどうやって窮地を脱するかを気楽に……というと語弊があるかもしれないが、楽しく読める。

非常に気になるところで終わったので、早く次が読みたいな。

映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 決戦」感想

 永山絢斗の件があって公開が危ぶまれたが、ひとまず無事に観られてよかった。

 

が、わざわざ前後編に分けた割には……という印象は否めない。

 

特に前半は、細切れのエピソードを並べただけで、

果たしてストーリーとして成立していたかどうか。

原作がある映画の場合はファン人気のあるエピソードは削れないとかあるのかも?しれないけど、

それなら120分使って作れなかったのかな。

第一作は上手くまとまってた気がしたのに難しいものだ。

場地さんと千冬の過去エピは可愛かったけど……。

 

一虎、逮捕されるときはパンチパーマだったのに

出所時には何故かおしゃれメッシュになってるのは

劇的ビフォーアフター(古)過ぎて面白かった。

当然出所してから美容院行ったのかと思いきや、

少年院の中にそんなおしゃれ設備が……???

と本筋に関係ないところで疑問符(というかツッコミ)が

頭の中に沢山浮かんでしまった。

 

【その他細々】

・眞栄田郷敦の筋肉凄すぎて一瞬「誰????」と思う。

あの特攻服の下にそんな凄い肉体が隠れていたとは……。

・ぱーちんが何故不在なのか既に記憶にない(すまぬ)

・ドラケンさん、兄貴肌通り越してママに近付いてる気がする。

格好良さと怖さとセクシーさが絶妙に同居していた第一作目が至高過ぎたため非常に物足りない……。

格好良いんだけどね。

・ひなちゃん可愛い。

相場英雄「ガラパゴス」感想

 「覇王の轍」が面白かったので、前の作品を読んでみた。

ただ、書かれた時期がこちらの方が古いからか、ちょっと微妙、と思うところがいくつかあったかも。

超聖人過ぎる被害者、

それまでに縁があったわけでもないのに、日本の産業界について非常に親切に(しかも何度も)レクチャーしてくれる有名アナリスト、

そしてその話を鵜吞みにする敏腕刑事の主人公……等々、

その人物設定で良いのか?と思う点がしばしばあって入り込めなかった感。

しかし、2016年に刊行されているからそこまで昔でもない印象だが(そうは言っても7年前か)、

こういう労働環境とかって今どうなんだろうね。

今回の被害者なんかは、人柄もよくて技術もあったようなのに、

それでも一度レールから外れるともう戻れないんだろうか。

手に職があるのはかなり強い気がするけど。

ネットニュースなんかでは貧困はよく取り上げられてるものの、

プロパガンダ的な面もありそうで何だか少し構えてしまう自分がいるのだった。

浅倉秋成「六人の嘘つきな大学生」感想

 二部構成の作品。

前半の「就職試験」部分はなんとも、フーン……という程度。

後半の「それから」がいわゆる謎解き部分だが、

ここで大きく一捻り入り、ラスト付近でさらに一捻り。これがよい。

また、就活というテーマ設定の妙よ。

多くの元学生たちの心に刻み込まれている(おそらく)負の記憶が呼び起され、

追体験というと少し違うんだろうけど、

単に架空のストーリーを読んでいる、という以上の胸のザワザワがあった。

日本でも転職はだいぶ増えてきてるそうだけど、

転職を考慮に入れないなら、あの短い期間でその後の人生が決まってしまうようなもの。

なのに自分の能力以上に、相手方の採用担当者なんかに依存するところがあったりして

どうにも釈然としない……というのが大方の意見じゃなかろうか。

読んでいてその辺のザワザワを思い出して、より面白い読書体験ができた気がする。

映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」感想

 予定の合間を埋めるため、映画館へ。

 

時間が合うのがこれか侍ジャパンの記録映画だったので、

 

メガヒット中と聞くこちらを選択。3Dで、吹替版でした。

ちなみに、スーパーマリオのどれかは借りてプレイしたことはあるが、

へたくそなので最後まで行けた覚えはないというライト層。

 

マリオは意外と弟愛にあふれる配管工(※夢を追って独立したものの仕事は上手くいってない)。

冒頭、車の故障のためルイージと共に走って配管工事に向かうシーンがあるのだが、

あれこれ障害物を乗り越えながら(※マリオのステージ的な感じ)、

先行してルイージのために道を整えてやる姿で

「あんな風にいつも弟を思いやってるんだろうなぁ……」と二人の関係をわからせてくる。

ルイージポンコツの極みだが、おおらかでクヨクヨしないタイプ。

ダークランドに落ち、クッパに捕らわれて助けを持つというヒロインポジでもある。

悩みがなくて幸せな人生を送れそう。

見る限りポンコツレベルはルイージの方が上なのだが、

父親にも誰にも評価されない……という鬱屈した悩みを抱えているのはマリオである。

性格的なものももちろんあるにしろ、やっぱり長男だから?とかあるのだろうか。

アメリカの事情がわからない。

 

ピーチ姫はとても可愛い。見た目は古い日本人的には

手放しで「カワイイ!」という感じでもないが、

声も相まってどんどん可愛く見えてくる。

そしてバトルシーンは彼女が一番格好いい。

クッパは部下の前では威厳ある風を装ってるが、

ピーチ姫への愛を弾き語るロマンチストなカメ。映画館では笑いが起きていた。

子供たちも、マリオを遊んだ昔の子供たちも楽しめる、家族向けとして確かな良作。

相場英雄「覇王の轍」感想

 理想的な社会派ミステリってのはこういうやつ!と思わされた良作。

まったくはじめて読む作者と思っていたが、

この本は「震える牛」のスピンオフだったらしくて、実は二度目ましてだった。

震える牛は面白かった、という記憶はあるものの内容は一切覚えていないが、

まったく支障なく楽しむことができた。

もちろん覚えていたら更にプラスアルファのお楽しみがあったのだろう。

しかし田中角栄なんて昔の政治家としか思っていなかったが、

角栄が50年も前にぶち上げた日本列島改造論がまだ生きていようとは。

50年も経つ間に各種交通インフラが充実し、

今ではJRや高速道路が走っているほかに、高速バスも航空機も運行しているのに、

一度立てられてしまった50年も前の計画が今も動き続け、

誰も乗らずに赤字を垂れ流し続ける新幹線の延伸が止まらないという超恐ろしいお話。

利権コワイ。単なるフィクションではないだろうと思わされるところが本当に怖い。

S・J・ベネット「エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人」感想

 エリザベス女王が登場人物(※主人公)として登場する、という日本では俄かに信じがたい小説。
(日本だと何となく不敬罪?的な感覚を覚えるような)


エリザベス女王は英国民から深く敬愛されていたと思うけど、
日本の天皇陛下へのそれとは種類が違うんだなぁ、と興味深い。
ひとつの「開かれた王室」の表れなのかな。
この本は、一応タイトル通り序盤で死体は出るものの、舞台がウィンザー城ってこともあって

自分が割りとよく読む「残忍」とか「凄惨」とかとは無縁。

陛下は常に聡明かつチャーミングで、

部下のプライドを傷つけることなく、それと気付かせずに事態を解決へと導く思いやりに満ちた女性として描かれ、

フィリップ殿下との関係もとても素敵だ。「キャベツちゃん」てほんと可愛い。

「可愛い人」みたいな意味合いで、実際使われていたそうな。

そんなこんなで、ミステリっていうか、王室本(二次創作)的な雰囲気をそこはかとなく感じる。

エリザベス女王オバマプーチンメルケル等の

他国のリーダーたちについてどう思っているかも書かれているんだけど、

実在の人物が、実在の人物について内心どのように思っているのかなんてのを

フィクションで書いちゃうのはなかなかすごい気がする。

日本の安倍首相(当時)もチラッと名前が出てくるけれど、

オバマ大統領夫妻との扱いの差よ……。

女王陛下の国への献身、君主としての心構え、

ウィンザー城で働く人々への思い、なんかにじんわり心温まり、

「近ごろは防弾ガラス張りの窓の、安全性を強化した車輛が主流になっているが、そちらは首相が使えばよろしい。君主たる者、民衆のまえに姿をさらせないようでは、なんのための存在なのか。」(p.240)

なんてのは格好良い。

格好良いけど、どうしたって敵が出来る政治家は、

安全性を強化するしかないんだよね。

もしも大多数の国民に愛されていたとしても、

一人でも強烈な殺意を抱く者がいたらそれを防ぐのは難しいもの……。

フロスト警部が面白かったので、

翻訳の芹澤恵さんを勝手に信頼しているのもあるかもしれないが、面白かった。

次作も読もうと思う。