理想的な社会派ミステリってのはこういうやつ!と思わされた良作。
まったくはじめて読む作者と思っていたが、この本は「震える牛」のスピンオフだったらしくて、実は二度目ましてだった。
震える牛は面白かった、という記憶はあるものの内容は一切覚えていないが、
まったく支障なく楽しむことができた。
もちろん覚えていたら更にプラスアルファのお楽しみがあったのだろう。
しかし田中角栄なんて昔の政治家としか思っていなかったが、
角栄が50年も前にぶち上げた日本列島改造論がまだ生きていようとは。
50年も経つ間に各種交通インフラが充実し、
今ではJRや高速道路が走っているほかに、高速バスも航空機も運行しているのに、
一度立てられてしまった50年も前の計画が今も動き続け、
誰も乗らずに赤字を垂れ流し続ける新幹線の延伸が止まらないという超恐ろしいお話。
利権コワイ。単なるフィクションではないだろうと思わされるところが本当に怖い。