※ネタバレを含みます。ちょっとネガティブな感想です。
宮中ファンタジーっぽいけど実はミステリーだったっぽいライトノベル。みたいな雰囲気の小説。
衣装の描写が多いので、出来たらカラーの挿絵的なものが見たかったかも。文庫とかではあるのかな?
絵といえば、あせびの髪型は薄茶の巻き毛のようだけど、
表紙の春殿がどう見ても巻き毛じゃないのは何だろう……地味に気になる。
終盤突然出てきて「私はすべてを知っている」的に種明かしを始める探偵役?の若宮が
どうも独善的でまったく好きになれないが、まさかこの男がこのシリーズの主人公だろうか……?
そこまで特に伏線があったわけでもないのに、
若宮が一人で悦に入って御高説を垂れただけに思えるところ、
それがイコール事実ってことで解決!ハッピーエンド!!ってなってしまうので、
「いきなり出てきて偉そうだなお前」と思って読んでた自分との間で
結構な温度差が生じてしまった気がする。
もう一冊読んでみるつもりだけれど、どうだろうなぁ。
身分の差があり、肉体関係はないものの思いは通じていた男が死んで狂ってしまった白珠に対して、
ノリと勢いで「腹の子はどうする!」的なタンカが全く意味わからないし、
それで白珠が「この子は守る!」って我に返ってる風なのも逆にヤバいのでは。
そして自分が一番よくわからなかったのは、あせびが結局どういう人なのか。
若宮の断罪するような責め方によると、あせび(とその母親の浮雲)は
「悪意が無ければ、全てが許されるのだと知っている者」とされる。
「知っている」ってのが無意識にそうなのか、あるいははっきり認識しているのかで
だいぶ印象が違うのだけれど、そこがはっきりしない。
彼女が語り手となる部分の地の文でも、まったく含むところがある様子がないし、
作者の書き方からすると、許されるのだと無意識に、本能的に知っていて、
無意識に自分に有利に働くように他人を誘導していく感じの女って設定だと思うけれど、
悪意無くして女性を男に襲わせる(しかも二回も)ってのが
どういう状況なのかまったくわからない。
まして毒殺したり(※浮雲)なんてあり得る……?
と考えると、はっきり認識していて悪意が無いのを装った、理知的で演技力のある悪女になるけれど、
どうもそういう書き方じゃないし……釈然としない。
若宮がもっと信頼のおける探偵役だったら、もう少し気持ちよく読めたのかも。
あと「アタシ」って一人称がすごく苦手でつらい。